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インドの半導体パッケージング市場:グローバル材料サプライヤーにとっての次の戦略的競争領域
1. 産業の野望と材料面の課題
2025年9月、インドの半導体産業が国内のニュースで注目を集めた。しかし、この野望を現実のものとするには、同国が先進的なパッケージング材料を確保できるかどうかにかかっている。ボンディングワイヤーや導電性銀接着剤、はんだ、フラックスに至るまで、これらの材料はチップが安定して電気を通し、高温に耐え、高度な2.5D/3Dパッケージング技術をサポートできるかどうかを左右する。
インドは電子機器の組立用に基本的なはんだ消耗品を生産する能力を開発してきましたが、チップレベルでの超微細・高純度材料の製造能力は依然として不足しています。このギャップにより、先進パッケージングにおいて輸入に大きく依存しており、上流工程における国内の研究開発投資の不足が浮き彫りになっています。
このような状況は、グローバルな材料メーカーにとって戦略的な機会となっています。インドが半導体関連施策を展開する中、国際的なサプライヤー各社はOSAT(半導体外注組立およびテスト)や関連分野をターゲットに、現地への進出を加速しています。
2. グローバル材料メーカーの戦略的動き
田中貴金属工業:フルサイクル型エコシステムの構築
田中貴金属は、世界のボンディングワイヤー市場の30%以上を占めており、インドを同社戦略の中核的な要素として位置づけています。伊藤裕孝取締役社長は、電子廃棄物から貴金属をリサイクルし、高度な製造向けのボンディングワイヤーやスパッタリングターゲットへと再利用するクローズドループモデルを強調しました。
同社は2020年にムンバイにインド子会社を設立し、当初は自動車分野に注力していました。現在は半導体パッケージングへのシフトを進めているほか、OSAT施設の拡充に合わせて、2026年から2030年にかけてリサイクル、精錬、供給の完全なネットワークを構築する計画です。
さらに、田中貴金属はSiCパワーセミコンductor用途向けに29種類の専用ボンディングワイヤーを導入しており、銅リードフレーム上での接着問題を克服する革新的な銀ペースト技術を開発することで、高性能な現地パッケージングソリューションを実現しています。
インディウムコーポレーション:製造とイノベーションをつなぐ
インジウム社はチェンナイに高級はんだペースト製造施設を設立しました。CEOのロス・バートソン氏は、短期的な動機は物流の効率化にあるが、長期的なビジョンとして、インドをAIチップパッケージング、通信機器、およびEVの熱管理における材料革新のハブにすることだと説明しています。
インジウム社の競争優位性は顧客との共同開発にあります。低温はんだペースト「デュラフューズLT」はその好例です。当初は低温実装向けに開発されましたが、現在では高性能コンピューティングや通信機器のパッケージング分野で広く使用されています。
今後、同社は大学および業界パートナーと連携して現地のR&Dチームを設立し、インドを単なる製造拠点からイノベーションの中心地へと変貌させる計画です。
3. インフラの課題と戦略的機会
インドは依然としてインフラのギャップに直面しており、特に電力供給、超純水の入手可能性、リサイクル用製錬施設が課題です。しかし、グローバルサプライヤーは販売主導型のアプローチから脱却し、貴金属のリサイクルやカスタム合金の開発などの分野で現地との共同イノベーションを進め、協働関係を築きつつあります。
インド初の大規模パッケージング工場が量産に近づく中、ボンディングワイヤーやはんだペースト、パッケージング接着剤のサプライヤー各社は早期からの布石を打っています。田中(タナカ)およびインディウム社にとって、インドは新たな市場というだけでなく、次世代の材料技術を実証する戦略的なフィールドとなっています。