ESD保護ダイオードの動作原理、等価回路、主要パラメータ、および選択のポイントを解説します。USB、HDMI、電源入力インターフェースの保護に設計されており、IEC 61000-4-2に基づく±8kVのESDサージを抑制し、システムの信頼性を確保します。
静電気放電(ESD)は、帯電した物体間の電位差により短時間で電気的なチャージが放出される現象です。これは精密な電子デバイスに不可逆的な損傷を与える可能性があります。電子デバイスがさらに高速化・小型化するにつれて、ESD保護に対する要求はますます厳しくなっています。ESD保護ダイオードは効率的で信頼性の高い保護部品として、信号インターフェースや電源入力などの重要なポイントで広く使用されています。
1. ESD保護ダイオードの基本的な動作原理
ESD保護ダイオードは通常、逆バイアスされたPN接合で構成されています。その核心メカニズムは、ESDサージのような高電圧が外部から印加された際に、ダイオードのブレークダウン特性を利用して過大な電流を迅速に接地へと流すことで、下流のコンポーネントへの損傷を防ぎます。
通常動作: シグナルライン電圧 (V IN ) が 0 から最大逆動作電圧 (V RWM ) の範囲内にある場合、ダイオードはオフの状態にあり、結合容量 (CT) のように動作します。
過電圧導通: 電圧がブレークダウン電圧 (V Z ダイオードは逆ブレークダウンモードに入り、電流を流し、電圧を特定のレベル (V) に固定します。 C これにより、負荷が保護されます。
導通状態では、ESD保護ダイオードをクランプ電圧源と動的抵抗 (R DYN ) の直列接続としてモデル化できます。そのクランプ性能は内部構造と密接に関連しています。
(イラストレーション: ESD保護ダイオードの接続例)
(イラストレーション: ESD保護ダイオードの等価回路)
2. 主要電気パラメータの分析
V RWM (最大逆起動電圧): デバイスが導通せずに動作できる最高の逆電圧です。
V Z (ブレークダウン電圧): デバイスが逆方向に導通し始める最小電圧で、その応答閾値を決定します。
V C (クラamping電圧): 指定された電流におけるデバイスの伝導時の電圧で、保護の強度を直接反映しています。
R DYN (ダイナミック抵抗): 伝導時の内部抵抗で、電圧降下に影響を与えます。低い値が望ましいです。
CT (接合容量): オフ状態で現れる寄生容量で、高速信号の integritiy に影響を与えるため、最小限に抑える必要があります。
3. 動作中の同等回路モデル
ESDダイオードには、2つの典型的な動作状態があります:
通常の状態では、このデバイスは小型コンデンサのように動作し、主に高周波性能に影響を与えます。
ESDサージが発生すると、ダイオードは急速に導通モードに切り替わり、相当直列抵抗と電圧源で構成されるクランプパスが形成されます。
実際、ESD電圧は非常に急峻な立ち上がりエッジ (<1 ns) を持っています。このとき、PCBトレースの寄生インダクタンスやキャパシタンスも保護効果に影響を与えることがあります。そのため、レイアウトの最適化が必要です。
eSDサージ応答の解析
8kVのESDイベントがインターフェースに適用されたと仮定します。IEC 61000-4-2によれば、サージ電流は最大30Aに達する可能性があります。ダイオードの動的抵抗が0.5Ωの場合、過渡電圧降下は15Vとなり、これがクランプ電圧に加算されます。したがって、総クランプ電圧を低減し、保護対象デバイス (DUP) への電気的なストレスを最小限に抑えるために、低いRDYNと低いVCを持つデバイスを選択することが重要です。
5. アプリケーションのレイアウトと選択の推奨事項
ESD保護設計では、デバイス自体のパラメータに加えて、PCBのレイアウトが重要な役割を果たします。次の原則に従うべきです:
外部コネクタにできるだけ近い位置にESD保護デバイスを配置し、配線における寄生インダクタンスと容量を減らします。
接地ピンを直接大きなグランドプレーンに接続して、インダクティブループを回避します。
USB 3.0やHDMIなどの高周波インターフェースには、低容量モデル(例: CT ≤ 0.5pF)が推奨されます。
マルチチャネル保護には、TVSアレイや統合保護モジュールの使用を検討してください。
(イラスト: ESDサージ時のシンプルな回路構成)
6. ESD試験規格の概要
一般的なESD耐性試験規格には以下が含まれます:
IEC 61000-4-2: システムレベルのESD耐性試験規格で、人体放電モデルを模擬したもので、典型的な試験レベルには±4kVおよび±8kVが含まれます。
JEDEC JESD22-A114: チップレベルでのヒューマンボディモデル(HBM)試験規格。
MIL-STD-883: コンポーネントの静電気放電(ESD)耐性を評価するための軍用規格。
ANSI/ESD S20.20: 生産プロセスや環境管理を含む、ESDコントロールシステムを確立するための規格。
7. 結論
ESD保護ダイオードは、ESDイベントに迅速に対応し、瞬時電圧をクランプすることで、現代の電子製品設計において欠かせない役割を果たします。ESD保護デバイスを選定する際には、応答速度、クランプ電圧、動的抵抗、接合容量を考慮すべきです。また、最適な保護性能を達成するために、特定のシステムインターフェースに基づいた適切な配置とPCBレイアウトも重要です。